一、巴御前

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山室陽子 昭和六十三年作曲

昭和六十三年度文化庁芸術祭参加作品

 

  • 胡弓:唄:平太鼓:山室陽子 
  • クラリネット:二宮和子
  • クラベス:山室三智代  
  • 箏高音:高橋陽華
  • 箏低音:佐久間陽玉  
  • 三絃:田端富貴子


 

(解題)


源義仲の愛妾(木曽中三権頭中原兼遠の女。今井四郎兼平の妹)巴は色白く、髪長く、容貌がまことに美しい。たぐい稀な強弓をひく精鋭な大将で、騎馬の戦いでも徒歩での戦闘でも、刀を持っては鬼でも、神でも、相手にしようという一人当千の将である。常に義仲に従い武将として夫を助けた。
富山県と石川県との間に在る倶利伽羅峠で、寿永二年(1183)源義仲が「火牛の計」によって、平維盛を破り、寿永三年正月二十日宇治川の合戦で陸続と現れる東国勢の中を次々と駆け破りながら次第に勢いを失ひ主従五騎になってしまったが巴は討たれなかった。義仲に女であるから「いづちへも行け」と云われ「最後の戦をして、お見せ申し度い」と云って武蔵の国の大力の御田八郎師重の首をねじ切って捨ててしまった。

 その後、鎧、甲を脱ぎ捨て涙ながらに、今、主の最後を見捨て、いづくをさして落ち行くべきやと嘆きながら、やがて東をさして行き方しらずになった。義仲は粟津で討死、兼平は自害。巴は生没年未詳「源平盛哀記」では頼朝に召され和田義盛の妻となり、朝日奈三郎を生んだが、和田合戦の時、朝日奈が討たれて越中に下り、出家、九十一才で生涯を終わる。

(歌詞)


くりから峠の戦いは、木曽殿の勝ち戦明けて寿永三年正月二十日宇治川の合戦。さんざんにかけなされ主従五騎にぞなりにける。五騎が内まで巴はうたれざりけり。「女なれば、いづちへもゆけ。我は打ち死にせんと思うなり。」木曽殿宜ひけれども巴は。「最後の戦して見せ奉らん」。其後物具ぬぎすてて、東の方へ落ちぞゆく。(平家物語より)

 


二、紅と瑠璃 ( くれない と るり )

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山室陽子 平成元年作曲

  • クラリネット:二宮和子
  • クラベス:山室三智代
  • 箏高音:高橋陽華
  • 箏低音:佐久間陽玉
  • 三絃:田端富貴子
  • 唄:山室、二宮、田端、岩倉、佐久間

(解題)


大空に燃える虹の美しさに、心ひかれるあまり、人の世においても、人それぞれに、虹のごとくにきらめくときがあれば、いかばかりうれしいことかとの思いをこめて、作曲いたしました。唄は、どなたにでも口ずさんで頂ける様にシンプルなメロディー(節)にいたしました。


(歌詞)


大空を渡る虹ぞうるわし、人もみな虹のごとくに、かがやきを放つときあり、紅に瑠璃に燃えてさやけし。

 


三、鐘ヶ岬

深草検校 作曲


  •     箏:唄:胡弓:山室陽子

(解題)


この唄は謡曲道成寺によって作られた、長唄京鹿子娘道成寺の歌詞を殆どそのまま上方唄にうたったものを更に深草検校(元禄から宝暦年間の人)によって箏曲にされたもので、鞠唄・小唄・山尽し廓尽し唄等をうたった優雅で味わいの深い曲。

 

(歌詞)


云はず語らず我心乱れし髪の乱るゝも、難面は只うつり気な、どうでも男は悪性のもの、桜さくらと唄はれて言うて袂のわけ二ッ勤めさへただ浮かうかと、どうでも女子は悪性者、都育ちは蓮はな者ぢゃえ、恋のわけざとかぞへくりや武士も道具をふせ編笠の張と意気地のよし原、花の都は歌で和らぐ敷島原に勤する身はたれと伏見の墨染、煩悩菩提の撞木町より難波四すぢに通ひきつぢに、禿立から室の早咲、それがほんに色じゃ、ひい、ふう、みい、よう夜つゆ雪の日、しもの関路も共に此身を馴染かねて、なかは丸山ただ丸かれと思ひ初めたが縁じゃえ。

 


四、陽光鑚仰

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山室陽子 平成四年(春)作曲


  • 胡弓:唄:三弦T:山室陽子
  • 三絃U:田端富貴子
  • 箏高音:高橋陽華
  • 箏低音:佐久間陽玉

(解題)


太陽は燦々と地球上の生きているものたちに、かぎりない恵みを与えてくれ、その自然の偉大な力に感謝し、喜びとうれしさを表しました。古代世界において、エジプト、南米、アラスカ、インカ帝国などは太陽を神として信仰があり、日本においても天照大神が日の神太陽と仰がれていました。


(歌詞)


あかつきの空染めて日は昇る昇る燦々ときらめきて大いなる恵みを与うあなうれしうれしあなたのしたのしたそがれの茜雲日は沈む日は沈む

 


番外 民謡 アカペラ ダンチョネ / さのさ

  • 唄:山室陽子

(解題)


昭和の戦中戦後、特攻隊の人達が賛歌で唄っていたと聞いています。ダンチョネとは「断腸の思い」の意と聞いています。

 私の叔父は最年少(中学5年)で特攻隊に志願しており、その当時を思い選曲しました。

 

(歌詞)


ダンチョネ
一、沖のカモメと飛行機乗りはどこで散るやら果てるやらダンチョネ
二、弾はとび来るマストは折れるここが命の捨どころダンチョネ

 

さのさ

 

乱髪みだれ髪顔に冷く二すじ三すじかかって淋しいこの寝顔アラやつれさせたもねえ僕ゆえに許しておくれよ捨はせぬ